六本木五丁目再開発計画の影響で、麻布十番商店街近くに移転することを契機に、親・子・孫の三世代が集まる暮らしの場と、先代から続くクリーニング店での生業の場を一体とした建築をつくる。

1階をクリーニング店舗・作業場とし、上階を住居として、中間階をテナントとした構成である。東西に細長い敷地の西側は店舗エントランスが面する生業の場「ミセ」であり、東側は住居エントランスが面する暮らしの場「オク」である。「ミセ」と「オク」は積層し、町屋的要素が立体化した建築である。

バルコニーは上下に積み重なったテナント・住居同士に「つながり」を生むためのしかけである。各階の営みや暮らしがバルコニーににじみ出し、商店街の賑わいがこの建築を通して立体的に展開していくことが、街並み形成に貢献できる形なのではないかと考えた。

昔ながらの商店街の面影を残す麻布十番の地で、手仕事による生業と多世代の暮らしが一体となった立体的な「町屋」的建築への試みは、アフターコロナで働く場所と住む場所の関係が見直される中で、古くて新しい建築のかたちなのではないだろうか。（栃澤麻利）

所在地：東京都港区

用　途：共同住宅、店舗、事務所、工場

建　主：個人

設　計：

・建築　SALHAUS

　担当：栃澤麻利、日野雅司、安原幹、田中邦幸、佐藤亘晟、石井奨人

・構造　構造計画プラス・ワン

・設備　ZO設計室

・サイン　氏デザイン

施　　工：サンユー建設

敷地面積：187.83m2

建築面積：115.37m2

延床面積：1,037.04m2

構　　造：RC造

階　　数：地下1階、地上9階

竣　　工：2021.04

写　　真：矢野紀行、吉田誠(※)

 

location：Minato-ku,Tokyo

main use：apartment / shop / office / factory

site area：187.83m2

building area:：115.37m2

total floor area：1,037.04m2

structure：RC

number of stories：1-basement and 9-stories

completion：2021.04

photo：Toshiyuki Yano , Makoto Yoshida(※)